静岡市美術館で開催されている「写真をめぐる100年のものがたり」展を紹介します。写真が発明されてから約120年。今は、スマホで手軽に撮影できる時代になりましたが、黎明期には芸術として作品を確立するための様々な試行錯誤がありました。本展覧会では、アルフレッド・スティーグリッツからトーマス・ルフまでの写真の歴史をたどることができます。
写真の歴史について
写真をはつめいしたのはだれ?
今から200年以上も前に、フランスのニエプス兄弟やルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが写真を発明したんだ。
ふむ、ふむ
その後、イギリス人のウイリアム・ヘンリー・タルボットによって「ネガポジ法」が発明されて、複製ができるようになったんだよ。
なるほどー!
身近な風景が記録として手元に残るなんて、当時の人は驚いたと思うよ。カメラはとても高価なものだったから、使うことができる人は限られていたけどね。
カメラの原理となると、もうちょっとさかのぼって、15世紀頃。フランスの画家たちは、カメラの仕組みを活用していました。箱にレンズをつけた装置(カメラ・オブスキュラ)を利用して、写生を行っていたのです。
その後、19世紀に入り、感光材料(光を感じて記録できる材料)が発明され、レンズを通して得た画像をそのまま手元に残すことができるようになりました。
フランスのニエプス兄弟が改良したカメラは、1枚の写真を撮影するのに約8時間(!)が必要でした。その後1839年には、フランスのルイ・ダゲールが、銀メッキした銅板を感光材料として使う「ダゲレオタイプ」という技術を発明し、露出時間は30分程度に短縮されました。
しかし、撮影された写真は複製ができない一点ものでした。
それが、ネガの発明で複製できるようになりました! これは、大きな進化でした。この方法を発明したのがイギリスのウイリアム・タルボット。1841年のことでした。この技術は現在の銀塩写真にも用いられています。
その後、コダックが「フィルム」を発売し、ライツ社から、小型カメラ「ライカA型」が発売されました・・・。
「写真をめぐる100年のものがたり」の展示構成
- W・H・フォックス・タルボット
- アルフレッド・スティーグリッツ
- エドワード・スタイケン
- ポール・ストランド
- 野島康三 などなど
黎明期の写真を見ることができます。
なかでも、アルフレッド・スティーグリッツの《ターミナル》(1892)、
《三等船室》(1907)、《ニューヨーク中央駅構内》(1903)は、とてもよかったです!
芸術としての写真の礎を築いたのが、アルフレッド・スティーグリッツ。
当時の様子をこんなにも生々しく伝えてくれる写真って「すごい!」。
《三等船室》(1907)の解説を読むと、偶然撮影された一枚に様々なドラマが隠されていたことが分かります。ぜひ、読んでみて下さい。
- ジャック・アンリ・ラルティーグ
- エドワード・ウェストン
- アンドレ・ケルテス
- アンリ・カルティエ=ブレッソン
- ブラッサイ などなど。
このコーナーでは、カメラが小さくなり機動力が増し、市井の人々を撮影した写真が多く展示されていました。
ジャック・アンリ・ラルティーグの写真は、コミカルなところが楽しい!
ブラッサイが撮影した夜のパリ、アンリ・カルティエ=ブレッソンのスナップ写真も、おすすめです!
- ウジューヌ・アジェ
- ルイス・ハイン
- アンセル・アダムス
- ウォーカー・エヴァンズ
- 木村伊兵衛
- 奈良原一高
- 細江英公
- 東松照明 などなど
働く子供たちの様子を捉えた写真はドキュメンタリー写真の先駆け。社会を動かし、労働環境の改善につながりました。
アンセル・アダムスの写真は、プリントの階調がとても美しくて、いつ見てもほれぼれします。
部屋に飾りたい!
- マーガレット・バーク=ホワイト
- ロバート・キャパ
- ユセフ・カーシュ
- W・ユージン・スミス などなど
1955年にニューヨーク近代美術館の開館25周年を記念して開催された写真展『ザ・ファミリー・オブ・マン』の写真を見ることができます。38カ国を巡回した大規模な展覧会で、当時、日本でも開催されています。
有名な、ロバート・キャパ《スペイン(共和軍兵士の死)》(1936)も、このコーナーで見ることができます。
- エドウィアード・マイブリッジ
- ラースロー・モホイ=ナジ
- マン・レイ
- エドワード・ウェストン
- ベルント&ヒラ・ベッヒャー などなど
動物の足がどのように動いているのかを解明するために撮影された写真が興味深いです! 写真が発明されたおかげで、解明されたこともたくさんありますね。
ベルント&ヒラ・ベッヒャー《冷却塔》(1963-82)の写真は、美しい! 撮影位置、角度、天候など、厳密に決められたなかで撮影されました。工業製品の美しさが伝わってきます。
ベルント&ヒラ・ベッヒャーは、写真を現代美術の領域へと押し上げました。
また、デュッセルドルフ美術アカデミーで、多くの写真家を育てました。
- 杉本博司
- 森村泰昌
- トーマス・ルフ
- トーマス・シュトルート
- 石内都
- 畠山直哉 などなど
杉本博司の劇場シリーズが3点。アメリカの劇場の荘厳な雰囲気と白く飛んだスクリーンのコントラストが美しい写真です。
トーマス・シュトルート《ルーブル美術館4、パリ1989》では、「絵画を見る人を撮影した写真を見る私」を体感してください!
「写真をめぐる100年のものがたり」のベスト3
ジャック・アンリ・ラルティーグは、私の好きな写真家です。従姉妹のユーモラスな姿を撮影した写真に、おもわず笑ってしまいます。
《従姉妹のビショネードが自転車で転んだ》(1907)は、従姉妹にうつぶせで寝てもらって、自転車はこっちに置いて、、、と演出された写真だと思われるけど、当時、こんな写真を撮ってみようと考えたその発想がすごいと思いました。
《従姉妹のビショネードが跳んだ》(1905)も楽しい写真です。
プリントの美しさはもちろんのこと、画面手前の岩から遠景の山までくっきりと写し出された自然の美しさに圧倒されます。
そして、雲の間から差し込む日差しも、崇高さを感じさせます。
アンセル・アダムスの作品は、全部で6点展示されています。
本展覧会では、《劇場シリーズ》から3点が展示されています。《劇場シリーズ》は、アメリカの古い映画館の内部を撮影したものです。
撮影方法は、映画が始まった時にシャッターを開け、映画が終わったらシャッターを閉じるというもの。
スクリーンは真っ白。スクリーンに投影された光で、映画館の内部が浮かび上がります。
美しい!
「写真をめぐる100年のものがたり」の開催概要
- 会場 静岡市美術館
- 会期 2024年10月4日(金)~2024年11月17日(日)
- 時間 10:00~19:00
「写真をめぐる100年のものがたり」の入場料
- 一般 1,300円
- 高校生・大学生・70歳以上 900円
- 中学生以下 無料
「写真をめぐる100年のものがたり」の混雑状況
週末でも、入場待ちをするほどの混雑はありませんでした。
ゆったりと鑑賞することができました。
ただ、開場直後や週末は、多少の混雑が予想されます。
「写真をめぐる100年のものがたり」の鑑賞時間について
展示作品の点数は約180点。
京都国立近代美術館コレクションを中心に構成されています。
鑑賞時間は、50~60分ぐらいで、一通り鑑賞することができます。
ゼラチン・シルバー・プリントの美しさを堪能してください!
「写真をめぐる100年のものがたり」の巡回情報
本展の巡回はありません。
ぜひ、「写真をめぐる100年のものがたり」展、見に行ってみてくださいね。
ばいばーい
コメント