現在、アーティゾン美術館で開催されている「ブランクーシ 本質を象る」展を紹介します。コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)は、ルーマニア出身の彫刻家です。物質の持つ「本質」を取り出そうと削りに削った結果、抽象的でミニマルな作品が生まれました。本展は、彫刻作品を中核に、フレスコ、テンペラなどの絵画作品やドローイング、写真作品など、ブランクーシの創作活動の全体を美術館で紹介する、日本で初めての展覧会です。彫刻作品約20点に、絵画作品、写真作品を加えた、計約90点で構成されています。
「ブランクーシ 本質を象る」展のベスト3
ベスト1 《空間の鳥》1926年 (1982年鋳造)
赤色の背景に屹立する輝く金色の鳥!
羽も、目も、足もなくて、目の前にあるのは、金ぴかのシュッとした細長い形。
秋刀魚に見えてくる…
しかし、これは鳥。
空間を切り裂くイメージとしての鳥。
羽はないけど、真っすぐに高みを目指し飛翔する鳥のスピード感を感じるフォルム。
鳥の「本質」を掴むために削りに削って残ったのは、細長く円弧を描いた形。
羽は、鑑賞者の想像に委ねられている。
大きく翼を広げた鳥がまぶたに浮かぶよ。
触ったら指紋がバッチリつきそうな感じで磨き上げられたピカピカの鳥!
触ってみたかったー!
ぜひ、《雄鶏》1924年とともに、ブランクーシの創造力を体感してほしいです。。
ベスト2 《眠れるミューズ》1910-11年頃
横になった頭部のみの作品。
こちらの作品は石膏の作品。
ブランクーシは、女性の頭部を象った作品を複数制作しています。
一歩間違ったら、ちょっと不気味な怖さを感じさせる作品になってしまいそう。
女性の頭部の「本質」を掴もうと削りに削った結果、卵のようなつるんとした形に…
表情はほとんど消えかかっていて、卵のような形にかすかに鼻や唇が見てとれます。
そして、じっくり見ると、わずかにくぼんだまぶたから眠っている様子が伝わってきます。
分かるか分からないか…
卵か頭部か…
ギリギリのところを攻めている感じ。
こちらの作品は、石膏のため、触ったらあたたかさが伝わってきそうでした。
石膏のさらっとした質感も、人のぬくもりを感じさせました。
眠っている穏やかな表情が、印象的な作品でした。
ベスト3 アトリエ
ここは、全部で5点の作品をじっくりと鑑賞することができる贅沢な空間。
「アトリエ」のセクションは、ブランクーシのアトリエを再現した展示空間になっていました。
残されている記録写真を見ると、ブランクーシのアトリエには、所狭しと、たくさんの作品が置かれていたようです。
このコーナーは、実際のアトリエを再現し、床も真っ白です。
そして、時間帯によって変化する日差しを再現するため、照明も変化させているそうです。(気付きませんでした)
そんな空間に、7点の作品が並べられていました。
作品は、
- 《王妃X》1915-16,磨かれたブロンズ
- 《若い男のトルソ》1922,磨かれたブロンズ
- 《ポガニー嬢Ⅱ》1925,磨かれたブロンズ
- 《肖像》1930,オーク
- 《洗練された若い女性(ナンシー・キュナールの肖像)》0928-32,磨かれたブロンズ
360度、様々な角度から作品を見ることができます。
- 《自在鉤》1928,錬鉄
- 《標識》1928,錬鉄
ぜひ、じっくりと鑑賞することをおすすめします。
*****
ブランクーシはロダンにその腕を認められ、1907年からロダンの工房で働き始めました。
しかし、あの超超有名なロダンの工房をたったの1か月で辞めて独立。
本展を見て、ブランクーシが彫刻でやりたかったことは、ロダンとは違っていたんだろうなーということが感じ取れました。
方向性の不一致。
ロダンの古い(!?)やり方に、ブランクーシは合わなかったのかも。
ブランクーシは、当時普及し始めたばかりの写真表現にも取り組んでいます。
彫刻界の世代交代。
今見ても、十分に尖っているブランクーシの展覧会。
ぜひ、見てくださいね。
「ブランクーシ 本質を象る」展の開催概要
【閉幕】
- 会場 アーティゾン美術館
- 会期 2024年3月30日(土)~2024年7月7日(日)
- 時間 10:00~18:00
「ブランクーシ 本質を象る」展の入場料
- 一般 2,000円
- 大学生・専門学校生・高校生 無料
- 中学生以下 無料
- カタログ 2,420円
- A5ファイル 352円
- ゆらゆらグラス 803円
「ブランクーシ 本質を象る」展の混雑状況
混雑しているのは、週末です。
しかし、入場待ちをするほどの混雑ではありませんでした。
会期末が近づいてきているので、混雑が予想されます。
余裕をもって会場へ。
「ブランクーシ 本質を象る」展の鑑賞時間について
鑑賞時間は、45分から60分ぐらいで、一通り鑑賞することができます。
「ブランクーシ 本質を象る」展の巡回情報
本展の巡回情報は、ありません。
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