【日曜美術館】『建築家・内藤廣 渋谷駅・世界一複雑な都市開発を率いる男』/街のクセに寄り添う建築・グラントワ・牧野富太郎記念館/2023年10月22日

いろいろ

乗降客数250万人の足を止めることなく進む東京・渋谷駅再開発計画の中心にいる建築家・内藤廣さん。「海の博物館」「牧野富太郎記念館」など周囲の環境と響きあう名作で知られる内藤さんにとって、渋谷駅開発も精神は同じ。「人間が中心にいること」だという。島根県芸術文化センターで開催中の個展で内藤さんの成功失敗含めた仕事をふかんするとともに、日々変わる渋谷駅の現場を内藤さんと歩き、建築や街にかける信条を聞く。(日曜美術館HPより)

【日曜美術館】内藤廣の渋谷開発

「渋谷」は、常に動いている生命体。

渋谷駅には、

JR山手線、JR埼京線、JR湘南新宿ライン、東急田園都市線、東急東横線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線、東京メトロ半蔵門線

たくさんの電車が乗り入れています。

そして、1日の平均乗車人員数は、38万人!

渋谷駅は、地上3階、地下5階と、たいへん複雑な構造になっています。

鉄道会社の思惑だけでなく、周辺の企業や住民の思いまでをもすり合わせて、渋谷駅を開発していくことは、至難の業だと感じました。

渋谷のまちづくりを検討する会議には、行政・企業の関係者だけでなく、地元の人々も出席しています。

一番大切なのは、人の気持ち。

内藤廣は、

土地の記憶、風土、歴史を大切にしながら、渋谷駅の開発を進めています。

そんな大プロジェクトについて、内藤廣は、

「渋谷という時間の流れに、プロジェクトを浮かべる」と話していました。

 

【日曜美術館】内藤廣のこだわり

「片づけ過ぎちゃうと、渋谷のよさがなくなってしまう。」

渋谷は、道路が錯綜し、様々なビルが林立していて、ごちゃごちゃしている印象があります。

しかし、これが、渋谷という街のもつエネルギー。

内藤廣は、渋谷駅の開発によって、ただきれいに整備された街を目指しているわけではありあません。

土地の記憶を大切にしながら、世紀の大プロジェクトを進めています。

たとえば、渋谷区には、たくさんの坂があります。

道玄坂、宮益坂、オルガン坂、スペイン坂など。

ひとつひとつの坂がもつ表情は、それぞれ違います。

坂の角度、曲がり方、周辺に立つビルのファサード。

それらの多様性を受け入れることができる、渋谷駅を目指しています。

建築家として、

100年後、200年後にどのようなメッセージを残すことができるのか?

内藤廣が常に考えていることです。

【日曜美術館】内藤廣の「B」

〇 鳥羽市立海の博物館(1992)

内藤廣は、独立して事務所を構えたものの、自分がどういう建築家になるのか迷っていました。

そんな時に、取り組んだのが「鳥羽市立海の博物館」でした。

この建築の設計を通して、自分の作り方が見えてきたそうです。

広く自由な展示空間を実現するため、柱のない木造構造とし、屋根の重量を支えるために密度の高い梁を取り入れました。

インタビューで、内藤廣は、

「技術が、空間や建築の新たな地平を開く」

と語っています。

 

〇 牧野富太郎記念館(1999)

牧野富太郎記念館は、高知県の五台山頂上付近に広がる高知県立牧野植物園の敷地内に建っています。

台風にも耐え、なおかつ、周辺の自然と共存できるような建物を目指し、斜面に伏せるような形になりました。

来訪者が、働いている人や行き来する人の姿を見ることができる構造になっていて、

外部と内部が、シームレスにつながっています。

牧野富太郎記念館には、牧野富太郎が27歳の時に描いた彼岸花のスケッチが収蔵されています。

この彼岸花のスケッチと出会い、内藤廣は「この建築からは逃れることができない」と感じたそうです。

建物ができてから20年以上が過ぎ、植物は大きく成長しました。

建築と植物の関係は、より親密性を増してきています。

訪れるたびに、新たな発見がありそうです。

 

〇 島根県芸術文化センター グラントワ(2005)

「グラントワ」は、美術館と劇場が一体になった建物です。

この建物の外観の特徴は、屋根と壁面に赤茶色の石州瓦が使われていることです。

石州瓦は、古くから島根県西部で生産されている瓦です。

屋根瓦12万枚、壁瓦16万枚!

100年、200年といった長い期間の風雪にも耐えられる素材で、なおかつコストも抑えることができるという利点もあり採用されました。

石州瓦独特のガラス質の表面が、天候、時刻によって様々な色に変化して見えるそうです。

完成した、グラントワを見た地元の人は、

「なんか不思議な気がするんだよね。前からあったような気がするんだよ。」

と話していたそうです。

現在、グラントワ内の「島根県立石見美術館」では、内藤廣の展覧会が開催中です。

 

内藤廣について

内藤廣(ないとう ひろし)は、1950年神奈川県生まれの建築家。
株式会社内藤廣建築設計事務所代表。

代表的な建築

  • 牧野富太郎記念館(1999)―第13回1999年度村野藤吾賞を受賞。
  • 島根県芸術文化センター(2005)
  • 富山県美術館(2017)
  • 東京メトロ銀座線渋谷駅(2020)

◆ 放送日時

【日曜美術館】『建築家・内藤廣 渋谷駅・世界一複雑な都市開発を率いる男』

放送日時 10月22日(日) 午前9時 ~ 9時45分
再放送 10月29日(日) 午後8時 ~ 8時45分
放送局 NHK(Eテレ)

『建築家・内藤廣/BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い』展の概要

  • 会場 島根県立石見美術館(島根県芸術文化センター「グラントワ」内)
  • 会期 2023年9月16日(土)~12月4日(月)
  • 時間 9:30~18:00
  • 休館日 火曜日

82点の手作り模型、10万字の解説。

日本を代表する建築家であり、島根県芸術文化センター「グラントワ」の設計者である内藤廣のこれまでの軌跡を、

「Built(ビルト=建設された建物)」と

「Unbuilt(アンビルト=実現しなかった建物)」の

双方からたどる展覧会。

「赤鬼」は情熱・夢想・逸脱などの象徴、

「青鬼」は論理・現実・堅実などの象徴。

本展は二匹の鬼が内藤になり代わり、

様々なプロジェクトを開設するという趣向をとります。

初公開資料も多数まじえた過去最大級の個展を、

内藤の代表作である「グラントワ」でお楽しみください。

(『建築家・内藤廣/BuiltとUnbuilt 赤鬼と青鬼の果てしなき戦い』展のチラシより)

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