東京富士美術館の所蔵品から約80点の西洋絵画が展示されています。かつて絵画は、主題(内容)と格(価値)が強く結びついていました。描かれている主題によって、絵画の価値が決まっていたのです。本展覧会では、絵画の「ジャンル」と「ランク」が分かちがたく結びついていた時代から、自由な主題で描かれるようになるまでの絵画史をコンパクトに学ぶことができます。絵画のジャンルというものがとても重要だった頃、画家がどのように表現方法を追究していたのかという視点で作品を見ることができ、とても新鮮な体験でした。
「西洋絵画の400年」の展示構成
ぺんちゃん、絵の価値って何で決まると思う?
うーむ。やっぱりうつくしさでしょっ!
それもあるけど、「昔は、何が描かれているか」が大切だったんだ。
えーっ? どういうこと!?
一番価値が高いのが、「歴史画」。2位は「肖像画」、3位は「風俗画」。その後、「風景画」、「静物画」と続いていくんだ。
っていうことは、どんなに上手でも、「静物画」ではかちはみとめてもらえないのかー?
そういうことになるね。
ペン、ペン。
本展覧会では、
Ⅰ 絵画の「ジャンル」と「ランク付け」
Ⅱ 激動の近現代 「決まり事」の無い世界
の2つのテーマに分けて、絵画の歴史を概観します。
Ⅰ 絵画の「ジャンル」と「ランク付け」では、
歴史画、肖像画、風俗画、風景画、静物画の順に
絵画の歴史をたどっていきます。
ルネッサンス期から19世紀前半頃までは、絵画の主題(内容)によって価値が決まりました。
一番、価値が高かったのが「歴史画」でした。
とくに、大きな画面で高貴な画題が好まれたそうです。
当時は、風景画や静物画を描いても、作品としては認めてもらえませんでした。
「ジャンル」と「ランク付け」という視点で絵画を見ることができ、より一層、作品を楽しむことができました。
Ⅱ 激動の近現代 「決まり事」の無い世界では、
19世紀後半から、「ジャンル」と「ランク付け」から解放され、絵画の主題がどのように変化していったかを見ていきます。
19世紀後半に入ると、様々な絵画の主題が生まれ、画家は革新的な造形表現を探究していきました。
絵画の価値観が大きく変革した時代です。
絵画のジャンルとランク付けから解放された画家たちは、次々と新たな表現技法を生み出していきました。
そんな自由な空気感が、作品から伝わってきました。
本展覧会では、モネ、ルノワール、ゴッホ、シャガールなどの作品もみることができます。
◆【レビュー】心に残った絵画3点
ヴェネツィアを描いたヴェドゥータ(都市景観画)です。
「カナレットとヴェネツィアの輝き」展を見て以来、カナレットの作品が気になってます。
空の青と地上の建物のオレンジ色の対比がとても美しい作品です。
そして、なにより建築物を緻密に描く画力がすごい。
右上から太陽光線が差し込み、大気がゆらいでいる感じも伝わってきます。
遠近法により、画面の左奥へぐっと引き込まれる感じもします。
▼ 「カナレットとヴェネツィアの輝き」展の記事は、こちら。
描かれているのはチェルケス人と白馬。
チェルケス人は、ヨーロッパとアジアの境の黒海沿岸に住む民族です。
まず最初に、白馬の鞍に目が行きました。
ターコイズブルーでとても美しく、目を引きました。
キラキラと輝いているような色彩でした。
そして、背景の空は、ブルーとピンクが混ざり合い輝いています。
白馬の横に建つチェルケス人の民族衣装もとても美しいです。
赤色と青色の対比がとてもきれいな作品でした。
卓上に置かれたパン(?)や瓶、器を描いた静物画です。
全体的にクリーム色を基調とした柔らかな色彩の作品で、ふんわりとした温かみが伝わってきました。
画面中央の黄色い容れ物は、漏斗を逆さにして溶接したお気に入りの器なのだそうです。
黄色、白色、グレー、茶色のハーモニー。
そして、器の形と配置。
テーブルの中央にぎゅっと寄せ集まった感じがかわいらしい。
見ているだけで心が落ち着く作品でした。
「西洋絵画の400年」の開催概要
- 会場 静岡市美術館
- 会期 2024年7月26日(金)~9月23日(月・祝)
- 時間 10:00~19:00
- 休館日 毎週月曜日
「西洋絵画の400年」の入場料
- 一般 1,400円
- 大高生・70歳以上 1,000円
- 中学生以下 無料
「西洋絵画の400年」の図録
- 図録 2,000円
「西洋絵画の400年」の混雑状況
開館直後と週末は混雑しています。
おすすめは、平日の午後です。
また、閉幕間近となる9月下旬は、混雑が予想されます。
お早めにお出かけください。
「西洋絵画の400年」の巡回情報など
本展覧会の巡回情報は、ありません。
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