「舟越桂 森へ行く日」彫刻の森美術館 本館ギャラリー(2024)/圧倒的な存在感 人間の存在の本質を彫る「心象人物」/チケット・混雑状況・展示構成・巡回情報など

美術展 国内作家

彫刻の森美術館(神奈川県箱根町)で開催されている「舟越桂 森へ行く日」展を紹介します。【彫刻家】舟越桂氏が生み出す人物像は、遠くを見つめ静かに佇んでいる表情が特徴的。素材は楠です。本展覧会は、同館の55周年記念として開催されている展覧会です。舟越桂氏も本展覧会の準備に携わってきましたが、2024年3月29日に逝去されました。

「舟越桂 森へ行く日」の展示構成

展示室1 僕が気に入っている

受付を通ってすぐの場所に、舟越桂氏のアトリエが再現されています。

会場には、舟越桂氏が創作をしている様子が映像で流れていたのですが、この映像を見ると、忠実に再現されたアトリエであることが分かりました。

様々な大きさののこぎり、のみ、かなづち。
たくさんあります!
そして、万力は、自作なのだそうです。
壁面には、メモや写真、雑誌の切り抜きなど。

鍛錬しなければ、
才能はさびついてゆくのみ。
芸術家は、小さな神として
新しい世界を創造しつづけている。
(壁面のメモより)

ネックレスのように結ばれ吊るされた、製作途中に出た楠の木片。

(頭部と胴体は、別々に制作され、最後に組み合わせたときに不要になった首の部分なのだそうです)

そして、様々な作品の小さな試作品の数々。
本展覧会に展示されている作品もたくさん机上に。

などなど、舟越桂氏のお気に入りのモノが所狭しと置かれていました。
一つ一つのモノをとても大切にしていたことが伝わってきました。
おもちゃ箱のような空間で、創作していたんですね。

《妻の肖像》(1979-80)も、再現されたアトリエに大切に展示されています。
このスペースには、

  • 《砂と街と》(1986)
  • 《冬の本》(1988)

も展示されています。

どちらも初期の頃の作品です。
眼は大理石で、視線が合わない遠くを見る眼差し。
穏やかで憂いを帯びた表情。
胴体には、ところどころひびが入っていて、年月の経過を感じました。

 

展示室2 人間とは何か

この展示スペースの中心には、

  • 《山と水の間に》(1998年)

が置かれ、四方の壁面にはドローイングが展示されています。
彫刻《山と水の間に》は、「人は山ほどに大きな存在なのだ」と感じた体験がもとになって生まれた彫刻だそうです。

 

展示室3 心象人物

細い階段を上って現れるこの空間は、まさに異空間でした。

広い空間に、8体の彫刻と、14枚のドローイング。
彫刻とデッサンを同時に見ることができます。

まず最初に、
《水に映る月蝕》(2003)が目を引きました。
丸みを帯びた腹部と背中から出た2本の手。
初めて目にする人は、ちょっと驚いてしまうかもしれません。
しかし、その不思議なフォルムは、鑑賞者の眼を引き付けます。

《青い体を船がゆく》(2021)は、青色の肌をした人物像の胸に、小さな船が浮かんでいる作品です。
水面を表現するような荒い削り方。
背後に回ると、とてもがっしりとした逞しい背中。
水色から濃い青色へのグラデーションも美しい。
作品のまわりをぐるりとまわると、どこまでが水面でどこまでが身体なのか分からなくなるような感覚になりました。

《海にとどく手》(2016)は、東日本大震災がきっかけとなって制作されたそうです。
水に映る月蝕》(2003)と同じようなフォルムの女性像です。

人間のすることを丘の上から見続けているスフィンクスをイメージしたスフィンクスシリーズ。

  • 《戦争を見るスフィンクスⅡ》(2006)
  • 《遠い手のスフィンクス》(2006)

スフィンクスの表情は、ぜひ、実物で鑑賞していただきたいです!
デッサンと合わせて鑑賞することができます。
デッサンも、とても美しいです!

 

展示室4 おもちゃのいいわけ』のための部屋

こちらには、舟越桂氏が家族のために作ったたくさんのおもちゃが展示されています。

  • 《木っ端の家》
  • 《クラッシックカー》
  • 《立ったまま寝ないの!ピノッキオ!!》
  • 《あの頃のボールをうら返した。》

などが展示されています。

また、入院中も絶えず描いていたという《スケッチブック》
描かれたモノを作家本人が、ページをめくりながら語るという貴重な映像を見ることができます。
こんな小さなスケッチから、おもちゃや人物像が生まれたのかなと思いました。
小さなスケッチブックですが、描かれたものはシンプルな線で、美しい!

1997年に発行された本『おもちゃのいいわけ』は、27年ぶりに増補新版として復刊されました。

 

「舟越桂 森へ行く日」の開催概要

  • 会場 彫刻の森美術館 本館ギャラリー(神奈川県)
  • 会期 2024年7月26日(金)~2024年11月4日(月)
  • 時間 9:00~17:00

 

「舟越桂 森へ行く日」の入場料

  • 大人 2,000円
  • 高校生・大学生 1,600円
  • 小・中学生 800円
  • 未就学児 無料

 

「舟越桂 森へ行く日」の混雑状況

彫刻の森美術館は、野外にたくさんの彫刻が展示してある施設です。
日本で初めての野外彫刻美術館。
週末は、多くの観光客でにぎわっていて、入場に時間がかかる場合があります。
また、駐車場も混雑しています。
あらかじめ、チケットは用意しておいたほうがよいでしょう。

本館ギャラリーで開催されている本展覧会は、おおきな混雑はなく、余裕をもって鑑賞することができました。

 

「舟越桂 森へ行く日」の鑑賞時間について

展示作品は、立体22点、平面35点。
資料なども展示されています。

鑑賞時間は、30~40分ぐらいで、一通り鑑賞することができます。

 

「舟越桂 森へ行く日」の巡回情報

なし

 

◆ おまけ

同館のアートホールでは、「彫刻の森美術館 名作コレクション+舟越桂選」が開催されています。

△ 三沢厚彦《Animals 2023-01》(2023)

とても大きな作品!
異なる動物が合体した巨大な「キメラ」!
なんと背面には、・・・!!
まだ、楠のいい香りがしました~

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