大分県に生まれ、大正・昭和の京都画壇で活躍した福田平八郎の回顧展が、大阪中之島美術館で開催されています。没後50年を記念した展覧会です。関西では17年ぶりの回顧展となります。ぜひ、自然の一瞬を瑞々しく切り取った、福田平八郎の世界に浸ってください!
「没後50年 福田平八郎」展の開催概要
- 会場 大阪中之島美術館
- 会期 2024年3月9日(土)~2024年5月6日(月)【閉幕】
- 時間 10:00~18:00
*会期中、展示替えがあります。
「没後50年 福田平八郎」展の入場料・グッズなど
- 一般 1,800円
- 高大生 1,000円
- 中学生以下 無料
- 図録 2,800円
- シャツ《漣》 16,500円
- ポストカード 150円
- アルミ蒸着クリアファイル《漣》 550円
など
「没後50年 福田平八郎」展の混雑状況
混雑しているのは、週末です。
現在、大阪中之島美術館では、「モネ 連作の情景」展が開催されていて、そちらも人気です。
当日券の購入には、列に並ぶ必要がありますが、入場待ちをするほどの混雑ではありませんでした。
「没後50年 福田平八郎」展の鑑賞時間について
鑑賞時間は、約90分ぐらいで、一通り鑑賞することができると思います。
わたしは、じっくり鑑賞したので2時間ぐらい滞在していました。
「没後50年 福田平八郎」展の展示構成
第1章 手探りの時代
福田平八郎は、1982年大分市に生まれ、18歳の時に京都へ出て絵を学びました。第1章では、学生時代の作品を中心に見ることができます。対象を的確にとらえ、美しく描く技術は、すごい。
《緬羊》(1918)には、10匹の羊が描かれています。飛び跳ねている羊、眠そうな羊、草を食む羊など。平八郎は、長崎で、初めて羊を見てたいへん驚いたそうです。その驚きを、8面の屏風に描きました。羊の毛並みのフワフワ・モフモフ感がとてもかわいらしい羊たちです。
第2章 写実の探究
平八郎は、どこへ行く時にも写生帖を持ち歩き、常にスケッチをしていたそうです。自らのことを「写生狂」と呼んでいたそうです。本展では、当時のスケッチ帳を見ることができます。一つの対象を様々な角度から見つめ、構図を考えていたことが分かります。平八郎は、学校を卒業した後、写実表現に徹した表現方法を追究していきました。様々な自然と真摯に向き合い、細部まで緻密に描いた作品を見ることができます。
安石榴(1920)は、ザクロを描いた作品です。葉の一枚一枚がとても精密に描かれています。濃い緑の葉は、とても生き生きと描かれ、うねりながら画面を縦に伸びる木の枝ぶりも生命力を感じさせます。そして、木に実るザクロの様々な表情も楽しむことができます。右下には、木の上で休む愛らしい猫が描かれていて、癒されます。
第3章 鮮やかな転換
写実を追究してきた平八郎でしたが、昭和4年以降、形態を単純化し、大胆な色彩と構図で、自然を描く方法を生み出しました。一見、抽象画にも見えるような作品も描きました。しかし、自然を徹底的に見つめる視点は変わらず、対象がもつ造形や色彩の豊かさを見事に写し取りました。
このコーナーが一番ワクワクしました。重要文化財《漣》(1932)を始め、《新雪》(1935)や《竹》(1940)など、シンプルな線と色の構成ながら、とても生き生きとした描写に見入ってしまいました。
《漣》(1932)は、金箔の上にプラチナ箔を貼り、その上に群青色の線を描いています。この頃、平八郎は釣りにはまっていました。水面の様子をとらえようと、繰り返しスケッチをしていました。多くの写生が残っています。水面は、よく釣りに出かけた琵琶湖のもののようです。大胆な構図と色彩は、今見ても斬新です。重要文化財に指定されています。
《竹》(1940)は、美しい青や緑、黄緑が眩しく、筍を加えたリズミカルな構図も楽しい作品でした。青竹の色が成長とともに変化することを捉えた平八郎の観察眼はすごいなあと思いました。
第4章 新たな造形表現への挑戦
平八郎は、様々な描画方法にチャレンジしながら、日本画の表現方法を模索していきました。蛤や鱶鰭(ふかひれ)など、身近なものにも、その造形の面白さを発見し、描きました。平八郎は、『よく見るということが何よりの頼りになるものです。』という言葉を残しているそうです。
《新雪》(1948)は、胡粉を何度も塗り重ね、ふんわりとした新雪の感触が伝わってくるような作品です。作品からは下地の色は分かりませんが、紺色を数回塗り重ねているそうです。具体と抽象の間を縫いながら、色と形を探究した真摯な姿勢が伝わってきました。
修復を終えた《雲》(1950)は、所蔵館以外では初公開となります。
第5章 自由で豊かな美の世界へ
晩年は、より大らかでのびのびとした造形を追究した作品が生まれました。このコーナーには、70歳頃の作品を見ることができます。
《鴛鴦》(1965)は、群像色の水面を、5羽の鴛鴦が泳いでいる様子を表現しています。黄色やオレンジ色で描かれたオレンジ色と水面の青のコントラストがとても美しい作品です。少し図案化されたような線で描かれた鴛鴦は、晩年になっても自然を愛し、あたたかな眼差しで動植物を見つめた視線が伝わってきました。
「没後50年 福田平八郎」展の巡回情報
福田平八郎展は、大阪会場の他に大分県での巡回が予定されています。
大分県出身の福田平八郎の凱旋展覧会となります。
日本画にあまり親しみのなかった方でも、楽しめる展覧会です。
ぜひ、足を運んでみてください。
- 会場 大分県立美術館
- 会期 2024年5月18日(土)~2024年7月15日(月)【閉幕】
- 時間 10:00~19:00
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